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263  ロバと狸

** 動物マンション保険人生劇場 **

** 263  ロバと狸

「このあいだ、保険会社から、パンフレットが来たんですよ」
「ほう」
「入院中の、保険診療にも対応するとか」
「よく分からんが」
「3割の自己負担分をも出す、と言うことらしいです」
「なるほどのう」
「これはいいかな、と思ったんです」
「それで、入ることにした訳じゃな」
「いや、入りません」
「良いと思ったのに、入らなかった理由はなんじゃね」
「よくよく考えると損だ、と思ったんで」
「そうかの」
「だって、当然保険料は高くなる。入院しなければ払い続けるだけ。健康な
ヤツほど損する」
「もっと考えれば分かろうが、入ったヤツが損するからこそ、保険会社とい
うモノが成り立つんじゃろうが。そう思わんのかね」
「・・・」
「もちろん、入院すれば契約通り出るじゃろう。しかし、健康なヤツがほと
んどだからこそ、保険も保険会社も成り立つ」
「そうでしたねぇ」
「そんな初歩のこと見失ってどうする」
「参ったな」
「そんなことでわしの考え聞きたいのかの」
「まあまあ。俺が思ったのはもう少し別なこと」
「ほう」
「保険診療まで生命保険がカバーして良いんだろうか、と言うことなんです。
もちろん、特約付けてだけど」
「特約付けすぎと言うことかの」
「というより、保険の範囲を広げすぎないのか、です」
「何でもかんでもはダメ、と言いたい訳じゃな」
「そうです」
「保険会社も必死なんじゃよ」
「保険会社じゃなくて、入る我々のことですよ。何でもかんでも保険に頼る
のが良いことなのか、なんです」
「なるほど」
「何でもかんでも保険に入ると、今度は、保険が使えるかどうか、が基準に
なってしまう」
「保険漬けの弊害という事じゃな」
「そうです。保険会社は、我々の行動を縛るためにある訳じゃ無い」
「それはそうじゃ」
「だから、俺なんかは、最初は良いと思ったんだけど、というか、良すぎる
んでこれはヤバイな、と思ったんですよ。俺なんか、意志が弱いから」
「むむ」
「保険に頼って安心して、保険が無くても安心できるように努力すること忘
れてしまう」
「なるほど。しかし、それは、あんたの問題じゃ」
「もちろん、分かってます」
「裏返せばの、それだけ魅力的な商品、と言う事じゃろうが」
「なるほど、そうも言えるんですね」
「当たり前じゃ」
「ダテに歳は取ってないですね」
「バカにしちゃイカンよ」
「とにかく、逆恨みと言われるかも知れないが、生命保険に関する限り、特
約は制限すべきだと思う」
「ほう」
「医療保険なら別ですが」
「なぜじゃね」
「単純な事です。生命保険とは自分が死んだ後のため。生きている時の
自分の役に立つ、というのは本来おかしい」
「なるほど」
「医療保険がなかった時代ならやむを得ないかも知れないが、今は違う」
「その頃入ったとすればどうなんじゃ」
「かなり前のだから、見直せばいい」
「見直しの良いチャンス、と言う訳か」
「そうです。とくに、医療保険の場合、定期的な見直しは絶対。医療の制度
や状況はどんどん変わりますから」
「そうじゃのう」
「でも、生命保険だと、生きているか死んだか、基準はそれだけ。世の中
の変化とは関係ない」
「そうか・・」
「だから、生命保険だけは単純であるべきだと言うこと。他の保険も、保険
というものは単純であるべきだ、とまでは言ってません。他のはどれだけ特
約付けようが構わない」
「まあ、最近は、保険会社も医療保険にシフトしておるような気がするが」
「いっそ、生命保険は単純化して、特約なんかは医療保険に移すよう見直し
勧めれば良いと思いますがね」
「特約を移すなんて、できるのかね」
「いや、特約が必要なら、新たに医療保険に入っていただく、という意味で
す。だから、保険会社にとっても、悪い話じゃ無い」
「なるほど。その通りじゃの」
「新しい特約のパンフ送りつけるより、どうして生命保険と医療保険の二本
建てへの、切り替えセールスしないのか不思議だ」
「言われてみると、そうじゃのう」
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